雑音を纏いながら。 -310ページ目
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独りで暮らす。

19年も生きていると、

親が鬱陶しいやら妹が寒々しいやら犬が可愛くなくなってくるやら、

部屋が狭いやら天井が低いやら壁紙の染みが醜いやらで、

自分の家を構えたくなるのだろうか。


メルアドを変えたと連絡をまわしたら、

>門真の片隅で住んでるよ~

って、待って。

今の今まで町内でいると思ってた私はどうなるの。

君のバイトしてるコンビニに、よくソフトを買いに行っては君を探していた私はどうなるの。


ずっと音信不通だった幼なじみからのワンコにかけ直したら、

>今、k町で住んでん。

>え?m町じゃなかったん?

>男はm町やけど、うちはk町やで。

え?よく聞こえないよ?

君の消息を、もう1人の幼なじみと案じていた私はどうなるの。

イトコの暮らすm町に行く度に、君に想いを馳せていた私はどうなるの。


え?

まだよくわからないんだけど?


私の思い描く独り暮らしは、途方もなく淋しくてオシャレな感じだ。


大好きなインテリア(アメリの部屋みたいに)と、大好きなパグと。

朝はお日様におはようを言って、グレープフルーツジュースを飲む。

お昼には、毎日パスタを作って美味しくいただくのだ。

近所にある図書館には週に1回は通って、好きな本を1日中読む。

公園に行けば、ジャリタレの笑い声と犬たちの吼え声が響いて平和を感じる。

スーパーで新鮮な野菜とお魚を買って、毎夜2時間かけて自分だけのために夕食を作る。

お風呂はもちろんトイレとは別々で、新しいシャンプーを欠かさない。

ベッドには大きなぬいぐるみと小さな照明と。



現実には、薄汚い部屋と不美味い食事に固い布団なのか。

アルバイトに明け暮れて、大好きなパグを抱くこともできないのか。

淋しい夜も電話代がもったいないから、隣りの部屋を盗み聞きしながら眠るのか。


あぁ、恐ろしい。

檻

そんなことをオイソレと始める君たちの頭の中を、

ぐるりぐるりと魔女の杖でかき回してあげたいよ。

何が悲しくて、若い女の子が独りで暮らすのかね。

下着を盗まれても、明日の食費がなくても、変な男がついてきても、

あの独り暮らしをする部屋へ、今日も帰るのかね。


私は、母離れ妹離れをしなければ、一生独りでは暮らせないだろう。

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